
信州大学繊維学部の照月大悟准教授(36)と千葉大学の中田敏是准教授(41)らの研究グループが、生きたカイコガの触角をセンサーとして活用したドローンを開発し、5メートル先のにおいの発生源を特定する実験に成功した。これは小型ドローンによる匂い探索の世界記録となる。
このドローンは、昆虫の嗅覚と小型ドローンの機動力を融合したもので、災害救助や危険物質の検知などへの応用が期待されている。2021年に雄のカイコガの触角を利用したドローンを開発したが、探索範囲は2メートル程度に限られていた。今回改良点として、センサーを特別なカバーで保護し、昆虫の行動を模倣した「段階的回転アルゴリズム」を採用。これにより探索精度が2倍に向上し、センサー寿命も5時間に延びた。
今後、蚊の触角を用いて人の匂いを追跡できる技術の開発が進められており、災害現場での要救助者発見に役立つ新たな手段として期待される。
研究の背景
嗅覚は動物や昆虫にとって重要な感覚であり、例えばガのオスはフェロモンを頼りに遠くのメスを見つけることができる。この能力を応用し、ドローンに匂いを活用したナビゲーション技術を導入する研究が進められている。従来の画像ベースのセンサーは悪条件下で性能が低下するため、災害救助や危険物検知などへの応用が期待される。2021年に照月准教授らのチームがカイコガの触角を搭載したドローンで世界初の匂い源探索に成功したが、探索範囲が2mに限られており、さらなる技術革新が求められていた。
今後の研究
研究チームは、嗅覚飛行ロボットを災害時の要救助者探査に活用する研究を進めている。福島国際研究教育機構(F-REI)の委託事業の一環として「嗅覚ロボットコンソーシアム」を設立し、蚊の触角をセンサーとして利用する技術を開発中。今後、より高度な嗅覚ドローンの開発や実証実験を行い、災害救助の新技術としての実用化を目指している。
■参考ページ
信州大学:https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles//news/2025/02/194408.html