
長野県産業労働部は、2025年2月から3月にかけて、県内におけるカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)の現状把握を目的に、県内企業、市町村・保育所、労働者を対象とした包括調査を実施した。調査はWEBアンケート形式で行われ、企業483社(回答率32.9%)、市町村・保育所ではそれぞれ14市町村(回答率70%)、8保育所(回答率40%)、労働者894名(回答率29.4%)から有効回答が得られた。
目次
企業では約2割が「顧客トラブル」を把握、対策進まず
企業のうち21.7%が自社内でカスハラ行為の発生を認識している。業種別では、「運輸・郵送業」、「金融・保険業」、「その他サービス業」で比率が高かった。
一方、企業の40.4%が対策を未実施、30.8%は検討段階どまりだった。効果的な行政支援策としては、「情報発信」(57.3%)、「マニュアル整備」(56.1%)、「法制度整備」(41.4%)が支持された。
市町村・保育所では過半数でカスハラ経験
自治体および保育現場では、54.5%がカスハラ発生を報告。内訳は市町村職員が64.3%、保育所スタッフが37.5%だった。
対策状況を見ると9.1%が未実施、31.8%が検討中にとどまる。
労働者3割が被害経験、メンタル影響を懸念
一般労働者の36.2%がカスハラ被害を経験している。特に「公務」、「学術研究・専門・技術サービス業」、「医療・福祉分野」で発生率が高かった。
勤務先のカスハラ対策は「未実施」が25.6%、「不明」が34.9%に達し、対策強化の必要性が浮き彫りとなった。
行政施策としては「情報発信」(62.1%)、「法令整備」(51.3%)、「マニュアル整備」(50.2%)が有効との見解が得られた。
対策強化が急務に:深刻化するカスハラへの対応を迫られる現場
本調査により、カスハラが従業員のメンタルヘルスや職場環境に深刻な影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなった。企業・自治体・労働者のいずれにおいても、十分な対策が講じられていない現状が明らかであり、現場では早急な対応が求められている。
今後は、実効性のあるマニュアル整備や、実態に即した啓発・教育体制の構築など、組織全体でカスハラ抑止に向けた取り組みを加速させる必要がある。
長野県プレスリリース:https://www.pref.nagano.lg.jp/rodokoyo/happyou/kasuharapress.html