
長野県の県林業総合センター(塩尻市)や斎藤木材工業(長和町)は、超高層木造ビル向け建材として、スギを圧縮・貼合した「圧密集成材」の開発を進めている。これは、20階以上の高層でも耐える強度があり、国産スギ活用にも貢献する技術です。
政府の法整備やESG投資の拡大を背景に、高層木造ビルの建設が活発化。東京都内では高層木造ビルが続々と完成中で、日本橋では地上18階建の国内最大級の木造ビルが進行中。プロジェクトは2023年度に始まり、竹中工務店や北海道立総合研林産試験場が設計・試験を主導し、県内2機関も加わっている。
従来のカラマツ集成材では柱断面が約1.5m四方になり居住スペースを圧迫するが、圧密スギ集成材では1.2m四方に抑えられる。コストは従来比約2割増だが、高価な耐火素材の使用量削減で許容範囲内に収まる見込み。
県林業総合センターでは試験(曲げ、強度など)を実施中で、2年以内に高層ビル柱への採用を目指す。
目次
背景と課題
2026年には都内に地上18階(高さ84m)の木造ビルが建設予定だが、下層部の柱を全て木材にすると断面が約2×2 mと巨大になり、国内最大プレス機(1.5×1.5 m)では製造できず、居住空間の損失や建材強度の課題がある
強度確保のため従来多用されてきた北海道産カラマツ丸太は、ウッドショック後に価格高騰し、供給競合などによりプロジェクトの制約となっている
圧密技術と研究目的
軽軟木種のスギ・トドマツに着目し、高温・高圧によって木材を厚み方向に50%圧縮し、冷却・固化させて密度と強度を向上させる圧密技術を研究。
家具やフローリング用途で実績のある圧密技術を、スギ・トドマツ素材で構造用部材に転用し、都市部高層建築の柱材として利用可能な高強度材料の開発が目的
高強度性能と他材比較
スギ圧密材はカラマツ集成材(E95・E105相当)を上回る圧縮ヤング係数(約15.0 N/mm²)を達成。
トドマツ圧密材はベイマツやダフリカカラマツ集成材(E120~E150相当)と同等または上回る約21.6 N/mm²を実現し、より高強度である可能性が高い
コストと実用性評価
柱の断面積をスギで63%、トドマツで44%に縮小可能。これにより加工・耐火被覆のコストも削減。
結果、圧密スギ柱の1本あたりコストは非圧密カラマツ耐火集成材と比較して約1.21倍、トドマツでは約1.04倍。高強度を保ちつつ材料コストが容認範囲に収まる見通し
結論と今後の展望
圧密集成材は、スギやトドマツという国産軽軟針葉樹を構造用途に転用し、圧縮・高強度・高密度化により、従来種では不可能だった強度と断面縮小を実現。
特に都市部の高層木造ビルの柱材料として有望で、量産化技術の確立、建築基準法に基づく認定取得、設計データの整備を通じて、実用化・普及が現実的に見えてきている
https://www.hro.or.jp/upload/52238/2412-2.pdf