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関東甲信越地域の金融経済概況〔2022年7月11日〕

目次

全体感

関東甲信越地域の景気は、供給制約の影響が強まっているものの、個人消費への感染症の影響が和らぐもとで、基調としては持ち直している。輸出・生産は、基調としては増加を続けているものの、足もとでは、供給制約の影響が強まっている。また、設備投資は全体として持ち直している。個人消費は、感染症の影響が和らぐもとで徐々に持ち直している。住宅投資は持ち直しつつある。公共投資は弱い動きとなっている。この間、企業の業況感は非製造業を中心に改善している。雇用・所得情勢は、労働需給に改善の動きがみられるものの、全体としては弱めの動きとなっている。

企業等の主な声(関東甲信越地域抜粋)

公共投資

・足もとの公共工事の受注は低調。先行きについても、県などの 2022 年度当初予算が前年を下回るもとで厳しい受注環境が続くとみている(新潟)。
・感染症対策関連の歳出増加を受けて投資的経費は減少傾向にあったが、2022 年度当初予算では防災・減災対策工事を中心に下げ止まり感がみられる(前橋)。

輸出

・北米を中心とする海外での民間工事の増加を背景に、建機の輸出が増加している(新潟[生産用機械])。
・自動車や日用品向けを中心に幅広い用途で化学製品の需要が堅調であり、欧州や東南アジア向けなど、輸出は高水準を維持している(前橋[化学])。
・上海のロックダウンによる生産や出荷停滞の影響から、中国向け電子部品の輸出が減少している(前橋[電気機械])。
・為替円安によって海外市場での価格優位性が高まっており、海外からの受注は引き続き増加している。ただし、原材料の輸入価格が上昇しているため、仕入コストが大幅に増加しており、採算が悪化している(新潟[はん用機械])。

住宅投資

・足もとの持家の着工は横ばいで推移。ただし、資材価格上昇に伴って販売価格を引き上げたところ、受注は弱含んでいる(横浜)。
・資材価格の高騰に伴って住宅価格が上昇する中、持家に比べて相対的に安価な分譲戸建の受注は好調。今後も分譲戸建の受注は好調に推移するとみており、販売物件を増やす方針(新潟)。

設備投資

・EV向けを中心とする車載用電子部品の需要増加を見据え、2022 年度は大規模な能力増強投資を実施する予定(松本[電子部品・デバイス])。
・半導体関連企業の設備投資意欲は旺盛であり、生産能力の増強に向けた工場の建設工事の受注が好調(甲府[建設])。
・業容拡大に向け、郊外を中心とした新規出店や、既存店の改装を進める方針。加えて、業務効率化や人手不足対応を図るため、モバイルオーダーや配膳ロボットの拡充など、デジタル関連投資も積極的に実施していく(横浜[飲食])。
・資材価格が上昇する中、設備投資の総額は不変としつつ、資材の種類等を安価な製品に入れ替え、投資費用を抑えようとする動きが広がっている(本店[建設])。
・原材料やエネルギーの価格高騰による収益の悪化から、今年度は更新投資を最小限にとどめる予定(新潟[生産用機械])。

個人消費

・感染状況が落ち着く中、客室稼働率は8割弱まで持ち直している。個人客は県民割などの需要喚起効果から県内在住者を中心に回復。団体客も修学旅行需要や企業イベントの再開を背景とした法人需要が持ち直している(横浜[宿泊])。
・入国制限の緩和を受けて、インバウンド客からの宿泊予約が少しずつ入り始めている(松本[宿泊])。
・まん延防止等重点措置の解除以降、売上は、来店客数の改善を主因に持ち直している。ただし、主要顧客層であるビジネスパーソンの需要回復が鈍く、夜間の売上改善は緩やかなものにとどまっている(横浜[飲食])。
・全国的に行動制限が解除され、外出意欲が高まるもとで、来店客数は増加傾向にあり、衣料品や靴などの売上が回復している(新潟[小売])。
・まん延防止等重点措置の解除以降、外食への需要回帰の動きもあり、ひと頃に比べると食料品の売れ行きには勢いがみられなくなっている(水戸[スーパー])。
・食料品の価格が上昇している中、顧客の買い上げ点数が減少しており、必要な物を厳選して購入している様子がうかがわれる(甲府[スーパー])。

生産

・既往の半導体不足が継続する中、上海のロックダウンの影響もあって、生産は計画比大幅に下振れている。上海の経済活動再開後も物流が混乱しており、生産回復にはまだ時間を要する見通し(横浜[輸送用機械])。
・上海のロックダウンの影響を受けた取引先の減産に伴い、当社でも住設機器向け製品の大幅減産を強いられているほか、業務用電化製品についても部材の調達難から生産計画に半年程度の遅れが生じている(水戸[電気機械])。
・スマホ向けの需要が旺盛なことに加え、自動車向けの需要も堅調なもとで、フル生産を続けている。先行きは能力増強投資を行い、増産を図る計画(前橋[電子部品・デバイス])。
・国内外での設備投資需要の高まりを背景に工作機械の受注が増加しており、生産についても高水準となっている。部材調達先の大半が国内メーカーである中、現時点では部材の調達難も生じていない(横浜[生産用機械])。
・原材料価格や電気料金が高騰する中、単純値上げは取引先の理解が得にくいことから、アフターサービスの拡充等と合わせた値上げに取り組んでおり、現時点では取引先から理解を得られている(松本[輸送用機械])。
・ウクライナ情勢の影響による輸入穀物の価格高騰に加え、為替円安による調達価格の上昇もあって、販売価格を引き上げざるを得ない(松本[食料品])。
・鉄やステンレス等の幅広い原材料価格が上昇しているものの、下請け企業である当社から元請け先に対して価格交渉を行うのは難しい(本店[金属製品])。

雇用・所得

・足もとの求人数は、宿泊需要の回復や居酒屋の通常営業再開に伴う新規求人がみられ、増加傾向。アフターコロナを見据えた企業の動きが活発化しており、先行きも改善傾向が続くとみている(横浜[行政機関])。
・客数は回復しているが、十分な従業員数を確保できないため、一部店舗では週末の営業を取りやめたり、臨時休業を余儀なくされることがある(松本[飲食])。
・入国制限の緩和に伴い、外国人技能実習生を2年振りに受け入れ、人手不足感が幾分和らいでいる。今後も受け入れ人数を増やしていく(前橋[運輸])。
・半導体製造装置向け部品の売上増加により業績が好調な中、政府からの賃上げ要請も踏まえ、今春、定期昇給とベアを実施。夏季賞与も、前年度から増額する方向で検討中(水戸[電気機械])。
・宿泊需要は持ち直しつつあるものの、宴会需要は依然低調で、今後の業績は不透明であるため、賃上げの実施を見送った(松本[宿泊])。

日本銀行さくらレポート(2022年7月)より転載

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